コロナが世界を揺るがすのは感染拡大や死者数の増加だけではない

コロナの影響で大きく打撃を受けている業種と業界事情

コロナ感染拡大により打撃を受けている業種は、ほぼすべてといっても過言ではありません。
マスク製造やトイレットペーパーなどニーズが高まった製品の製造を手掛ける医療品・衛生用品メーカーや外出自粛やロックダウンへの不安による買い込み需要が増えて来店数や売上が増大しているスーパーやドラッグストア、加工食品メーカーなど一部を除けば、ほとんどの企業や店舗に影響が出ています。
いわゆる特需が訪れている業種でも、増産による24時間操業で人手不足が問題となる場合や感染の不安にさらされ、顧客からのクレームに耐えながら働くスーパーやドラッグストアの従業員などの問題に悩まされるケースも少なくありません。
いざ1人でも感染すれば、工場の生産も店舗の営業も停止せざるを得ず、戦々恐々とした状況が続いているのです。

大きな打撃を受けている業種を身近なところから挙げれば、飲食店や接客を伴うお店が挙げられます。
人と会食することで感染する、ビュッフェスタイルは感染リスクがあるなどの報道を得て、飲食店を利用する人が減ったほか、各企業が自社の人材を維持するために飲み会や複数での飲食を禁止するなどの動きも出たためです。
また、クラスターが発生したとひとたび報道されれば、その業種も軒並み打撃を受けます。
屋形船、スポーツクラブ、ライブハウス、ホットヨガ教室やカラオケ店なども営業停止を受け、利用者が激減した業種の一つです。

ホテルや旅館なども全国的に大打撃を受けています。
インバウンド需要で多くの外国人客で賑わっていたホテルや旅館は、海外からの渡航禁止に伴い、閑古鳥となりました。
日本でも外出自粛や移動制限が始まったことで、日本人客の利用も見込めず、ゴールデンウィークや夏休みに至るまでキャンセルも相次いでいます。
各地の観光地も大打撃を受けており、ホテルや旅館、飲食店から土産物店に至るまで、国内外からの観光客が来なくなった状況では手の施しようもありません。

さらにレジャー業界やエンターテインメント業界、デパート業界なども大打撃を受けているのが実情です。
遊園地や水族館、パチンコ店などのレジャー施設や娯楽施設、大型商業施設の営業自粛、各種イベントやコンサートの中止で芸能関係者や音楽家なども仕事を失い、収入がなくなるケースも見られます。

音楽教室などの習い事や、エステサロンなど人と近距離で対峙するサービスについても、営業休止の動きや利用者の激減により、事業運営が立ち行かない状況が出てきているのが現実です。

日本経済や世界経済をめぐる各種業界の動き

企業活動や経営に大きな影響が出ている中、日本はもとより、世界各地でも政府に対して保障を求め、この状況下でいかに企業を維持していくか、雇用を維持していくかといった動きが加速しています。
ヨーロッパ諸国では各国政府が店舗の家賃や光熱費を肩代わりすることや従業員の給与の補償などを行ったことで、比較的スムーズに店舗の運営を停止し、多くの人が素直にステイホームを受け入れる環境が出来上がっています。

一方の日本では経済活動の維持を優先させようとしたばかりに、感染が拡大傾向を見せる中、営業停止ではなく自粛要請に留まり、十分な補償が提示されない中、企業やお店の模索が続き、混沌とした状況が続いています。
営業自粛要請が出ても、生活のためや借金を返すために営業を続ける店もあり、国民全体がワンチームとはなれない状況が見られるのです。

日米株式市場から見る世界経済の動き

感染が世界に拡大を見せた2020年3月初旬の時点で、米株式市場のダウ工業株30種平均が7日連続で続落し、25,409ドル36セントとなりました。
これは2019年6月4日以来の安値であり、週間ベースの下落幅は3,500ドル超し、2008年10月のリーマン・ショック直後に付けた1,874ドルを上回りました。
日本株式市場も下げ相場が続いていますが、4月に入り、緊急事態宣言や東京でロックダウンが起こるのではといった不安から、日経平均が二番底を探る動きを見せています。
米ダウ平均も1月から3月の第1四半期は約23%下落し、四半期としては1987年以来の大幅安となっています。

日米の株価指数と世界金融ストレス指数の推移を見ると、投資家のリスク回避姿勢と信用ひっ迫に伴い、金融ストレス指数が増大しており、一時はリーマン・ショック以来の水準に達しました。
ただ、3月19日に2.46に達した金融ストレス指数は3月末には1.75へと低下し、高水準ながらも早くもピークアウトの兆しが見られます。
コロナの収束を待たずとも、各国政府と中央銀行が大規模な政策対応を行って、信用市場を安定させることで、企業と消費者の活動縮小を和らげることができれば、投資家の投資意欲も回復に向かう期待が持てます。
もっとも、見えない敵に日々状況が変わって一喜一憂する状況では、企業業績に下押し圧力がかかり、株価が戻り売りに直面する展開もあるでしょう。

一方で、コロナ感染が収束に向かい、5月以降に移動制限が緩和されていけば、抑え込まれていた需要が持ち直し、米国でも徐々に雇用が回復して、株式市場も回復の動きが期待できるかもしれません。
ちなみに感染が最初に発覚した中国では経済活動が2月に急悪化しましたが、3月には回復の動きが見られ、ロックダウンされていた武漢で4月8日に移動制限が解除されると、一気に株式市場にも盛り上がりが見られています。
中国の実質成長率は第1四半期にはコロナの影響で-5.2%と落ち込みましたが、第2四半期は+3.7%とプラスに転じるとされ、年の後半には成長軌道を取り戻すと予想する専門家もいるほどです。

オリンピック延期が及ぼす経済事情

オリンピック延期に伴う影響も、さまざまな業種や業界で生じています。
インバウンド需要を見込んでいたホテルや旅館、観光地の施設や選手村や会場周辺の飲食店、世界各地のチームの合宿所となる予定だった地域の施設も頭を抱えている状況です。
オリンピックに備え、すでに何千万円、何億円の投資をしているケースも多く、これを回収できるのかは今後の大きな課題です。



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